第四十六章 · Chapter 46
知足
天下有道
天下に道有れば戦馬を退けて田を耕す。天下に道無ければ戦馬が野に子を産む。禍は不知足より大なるはなし——知足の足、常足なり。
天下有道,却走马以粪。
天下无道,戎马生于郊。
祸莫大于不知足;咎莫大于欲得。
故知足之足,常足矣。
天下に道有るときは、戦馬を退けて以て田畑を耕す。
天下に道無きときは、軍馬が郊外に子を産む。
禍は不知足より大なるはなく、咎は欲得より大なるはなし。
ゆえに足るを知るの足、常足たり。
| 字句 | 読み | 意味 |
|---|---|---|
| 却 | què | 退ける、下げる |
| 戎马 | róng mǎ | 軍馬、戦用の馬 |
| 粪 | fèn | 肥やし、耕作 |
「却走马以粪」
天下に道がある時代は、戦争に使う馬を退けて田畑を耕す——平和な時代には軍事力は不要。
軍事費が教育や福祉に回される世界——老子の理想的社会像。
軍事費が教育や福祉に回される世界——老子の理想的社会像。
「知足之足,常足矣」
足ることを知るその足こそ、永遠の充足——外的な満足は一時的だが、内的な満足は永遠。
「足るを知る」ことは諦めではなく、自分自身の内なる豊かさに気づくこと。
「足るを知る」ことは諦めではなく、自分自身の内なる豊かさに気づくこと。
「知足」=現状に甘んじること
知足は精神的な充足——欲望に支配されないことであり、現状維持を意味するものではない
「天下有道」=完全な平和主義
軍事力の否定ではなく、軍事力が必要ない社会の理想——道に適った政治の結果
💡 消費社会と知足
「まだ足りない」「もっと欲しい」——消費社会は常に不知足を煽る。老子の知足は現代の消費主義への最も鋭い批判。
応用:購入前に「本当に必要か?」と三日間待つ。衝動的な欲求と本当の必要を見分ける。
応用:購入前に「本当に必要か?」と三日間待つ。衝動的な欲求と本当の必要を見分ける。
🏢 平和と資源配分
組織でも国家でも、不要な争いに資源を浪費するより、本来の目的に集中すべき。
応用:組織内の政治闘争や無意味な競争を減らし、本業に集中する文化をつくる。
応用:組織内の政治闘争や無意味な競争を減らし、本業に集中する文化をつくる。
王弼(魏晋、226–249)
「天下有道、知足而止。」
知足を以て有道の核心と解す。
河上公(漢代)
「人主有道。」
人主(為政者)が道を持つことの重要性を説く。
陳鼓応(現代、1935–)
「戦争と平和の対比を通じて知足の政治的意義を示す。」
戦争と平和の対比による知足の政治的意味を分析。
🔗 本章の関連
📖 本書内での呼応
📚 他経典との呼応
『論語』顔淵——食を足し兵を足し民之を信ず
ガンジー · 非暴力
🌍 現代思想との呼応
平和学 · 消極的平和と積極的平和
消費主義批判